フェイバリットストーン 銀座本店

★★★ 2018年9月末締切り分 ★★★
宝石エッセイ募集の入選作品を発表します

この度もたくさんのご応募、誠にありがとうございました。
今回は2回目のエッセイ公募となり、皆様から再び素敵なエピソードを数多くご応募いただきました。

寄稿していただいた作品一つ一つそれぞれが、宝石やジュエリーに対する様々な想いや思い出が丁寧に書き綴られておりました。
時に心が揺り動かされ、その思い出を共に経験したかのように感じられる臨場感にあふれるストーリーがあったり、「宝石やジュエリーには、こうあって欲しい」と、宝石を販売する側、そしてそれを購入する側双方から、改めて考えさせられるものでありました。

それらの中から最優秀賞、優秀賞、入選の作品を選ばせていただくというのは本当に難しく、関係者一同とても悩みましたが、厳選の結果、入選とさせて頂きました作品をここに発表させて頂きます。

◆総評

●画像+エッセイ200文字コース

最優秀賞に選ばせていただいたご応募作品「大人の女性」は、なによりも太陽の光に透かされたカメオの美しさに目を奪われました。本質はポップで遊び心満載の「カメオ」というアイテムですが、なかなか敬遠されがちなジュエリーであることも確かです。しかしそれを手放すのではなく「いつか似合う女性に・・・」と思われているそのお気持ち、とても素敵だなと感じました。きっとお母さまも素敵に着けこなしてらっしゃったのだろうと、そしてその娘さまもきっといつか素敵に・・・と、このカメオの明るい未来が見える、希望に満ちたエピソードでした。

優秀賞に選ばせていただいたご応募作品「アメジストのお守り」は、それぞれの宝石がご家族になぞらえられている作品だというところに、心をグッと掴まれました。お母様が歩んだ人生の軌跡はきっと確かにアメジストに刻まれていて、その人生をダイヤモンドであるお父様と淡水パールの3人兄妹で暖かく包み込んでいる雰囲気のデザインに仕上がっているピンブローチは、宝石たちもニコニコ幸せそうに私たちの目にも映ります。「ブローチの中では五人はいつも一緒だ。」のお言葉に、とても心が温かくなりました。

●エッセイ800文字コース

最優秀賞に選ばせていただいたご応募作品「ピンク」は、きっと女性の方の多くが共感される部分が多いエピソードではないかと思います。「自分に似合わない色だから、嫌いな理由を無理に作り上げていた。」というお言葉に、ジュエリーに限らず私も心当たりがあるなあと、しみじみ共感いたしました。それを吹き飛ばしてくれるほどのパートナーの方の揺るぎないお言葉に、心がときめきました。
生涯を通して、男性の方が女性の方にジュエリーを選ぶ機会は、きっとそんなに多くないと思います。勇気を出して宝石店に足を運び、一生懸命に似合うものを吟味して・・・と考えるだけでも、顔がほころんでしまいます。
ジュエリーそのもの以上に、お選びになったパートナーの方のその「心」を受け取られたエピソードに、深く心に染み入るものを感じました。

優秀賞に選ばせていただいたご応募作品「指輪に似合う女」は、「ジュエリーや宝石は本来こうあって欲しい」と、私たちの願いが正に具現化されたようなエピソードだと思いました。さりげなくなんて着けられない。だって、目に入るたび、感触を感じるたびにワクワクドキドキ「とっておきの宝物」を感じて、心がときめくから・・・。本当にそうだと思います。手のひらに乗るくらいの小さな、でも特別なジュエリー。それが「指輪一つで生き方まで変わる」まで思わせる魔力。
それはきっと「高い宝石だから」ではなく、特別なタイミングで、共に人生を歩んできた大切な旦那様にプレゼントされたものだからということも大きいのではないかと思います。キラキラした笑顔で毎日を過ごされているだろうご投稿者様の充実した毎日が、目に浮かぶようなエピソードでした。

入選作品に選ばせていただいた「画像+エッセイ200文字コース」2作品、そして「エッセイ800文字コース」3作品は、選出関係者が中でも特に心を揺さぶられたものを選びました。ご寄稿いただいた全ての作品においても言えることなのですが、多くの方にとって「ジュエリー」や「宝石」には、大切な方との思い出が刻まれたものであるということが、あらためて実感として感じられました。
特別なタイミングで大切な人から、もしくは自分で手にし、そこから歩む人生をつぶさに刻んで折に触れて大切なことを蘇らせてくれる・・・。勿論、相手は言ってしまえばただの「モノ」かもしれませんが、そこに人の想いが介在することで素敵な化学反応が起こる、それが「宝石」や「ジュエリー」なのだなと、しみじみと感じました。

この度は数多くのご応募、誠にありがとうございました。 みなさまの大切な思い出をたくさんお寄せいただきましたこと、心から感謝いたします。 選出できなかった方々のエピソードも、それぞれ優劣付けがたく、その中でこうした賞を設けましたこと、どうかご容赦ください。

当店では今後もこうした募集をおこなってゆきたいと考えております。 次回募集の詳細は下記のページに掲載させて頂きます。

https://www.favorite-stone.jp/compe/

今後も皆様の宝石やジュエリーに対する想いや思い出に触れられますことを、心から楽しみにしております。

フェイバリットストーン 店長 内山美緒

入選作品

画像+エッセイ200文字コース

最優秀賞

大人の女性(ぶんけいに 様・福島県・43歳・女性・無職)

十数年前、母から譲り受けたシェルカメオ。
淡く優しい色合い、愛らしさと美しさ、そして素朴さを併せ持つ横顔。
シンプルでいて存在感のあるシェルカメオを、私はいまだに使いこなせていない。
自分が脇役になってしまう気がするから。
カメオを脇役にして、そっと身に着けられる品格のある大人の女性に、私はいつかなれるだろうか?
シェルカメオの似合う女性は、今も昔も、私の憧れ。

優秀賞

アメジストのお守り(武部恵 様・千葉県・48歳・女性・パート・アルバイト)

地味な装いの母だったが、アメジストの指輪だけはよく着けていた。アメジストは母の誕生石。母が亡くなり、その指輪を見る度切なくなった。でも、私にはどうも似合わない。しまっておくよりはと、ピンブローチにリフォームした。アメジストの母を支える一粒のダイヤは父、三粒の淡水パールは兄二人と私。五人家族が今はもう次兄と私だけだが、ブローチの中では五人はいつも一緒だ。今日もお守りのように、胸に静かに輝いている。

 

入選

父との絆(Uiko 様・東京都・62歳・女性・フリーランス・自営業)

銀座で開業していた父は、今で言うイケダンで、カルティエのライターで葉巻をくゆらす、お洒落な人でした。父がデザインした指輪は、蛇腹のリングにエメラルドが配され、父は自分の干支、龍をイメージしたのかもしれません。紳士物は、例え高価な時計でも、身に付ける事は難しいですが、父の形見の指輪は、母からわたくしへと、時空もジェンダーも超えて、わたくしの大好きな父を身近に感じられる、大切な大切な、宝物であります。

入選

生きている~個性の変化が楽しみな翡翠たち(m. chiye-che 様・兵庫県・54歳・女性・パート・アルバイト)

幼少期、父が祖母から譲り受けた翡翠のピーディスクを初めて見せてくれた時から、その緑の美しさに魅せられ、この曽祖母の形見の翡翠は30年以上私の体の一部となり、緑色も濃くなりツヤも増し、翡翠は正に生きていることを実感。肌につければつける程、色も姿も変化する魅力にとりつかれて以来、国内外で翡翠を集め始め、全員が私の大切な家族となり、今後各々がどんな風にその美しさをアップさせていくのかを見るのが楽しみ。

エッセイ800文字コース

最優秀賞

ピンク(ひな 様・栃木県・29歳・女性・会社員)

色黒で男顔な私はピンクが似合わない。特に桜のように淡いピンクはまったくダメだ。

幼い私に買い与えられる服は、いつも赤や青などはっきりした色味のものであった。それを不満に感じたことはない。私自身そういう色が好きだったし、実のところピンクにはかわいこぶりっこで子供っぽい色だという印象を抱いていて、少し見下しているフシもあった。年頃になり自分で衣服を買うようになってからもピンクを選んだことはなく、大人になってもその性向は変わらなかった。

そんな私の誕生日に彼がくれたのは、モルガナイトのペンダントだった。透き通ったローズピンクの石は美しく、しかし私には到底似合いそうもない。

数ある宝石の中でなぜこの色にしたのか。不思議だったし少し不満でもあった。彼の前で反ピンク主義を吹聴したわけではないが、それでも私の周りにピンクがないことから察してくれてもよさそうなものなのに。好きな色を伝えたことだって何度もあるのに。

もしかしてたいして考えることなく店員に勧められるままに選んだのでは? ピンクが嫌いな女性なんていませんよ、なんて言われて。
「なんでこのペンダントにしたの?」

私は喜んだふりをして礼を言ってからさりげなく聞いてみた。すると彼はぼそりと、 「その色が一番君のイメージに合っていると思ったから」

と答えた。彼は気恥ずかしさを隠そうとするとき、ぶっきらぼうな態度をとる。

……へぇ、ふーん、そう。あなたにとって私は、こんな可愛らしいイメージなの。

にやにやが止まらなかった。うれしかったのだ。

ピンクなんて子供の色。かわいこぶりっこの色。結局、すっぱい葡萄だった。自分に似合わない色だから、嫌いな理由を無理に作り上げていた。

けれどそんなひねくれた思いは、彼の一言ではじけ飛んだ。

他のだれがなんと言おうとも、彼がそうだと言うのならば、このモルガナイトのピンクが私の色だ。

優秀賞

指輪に似合う女(桂未希 様・兵庫県・61歳・女性・パート・アルバイト)

ついにその日がやって来る。私が還暦を迎える日だ。遠い未来と思っていたが、意外と早くやって来た。御祝いとか、記念の品とか考えてもいなかったが、指輪を買ってもらった。
その指輪とは友人の宝石商の展示会で出合った。私の誕生石のターコイズが輪っかにくり抜かれ、細かいダイヤがぎっしり埋め込まれた丸いフレームと輪つなぎの様に繋がれている何ともオシャレで豪華なものだ。サイズ直しが出来ないデザインなのに、私の指に誂えたかのようにすっぽりはまった。一目見て気に入ったが、私の買える値段ではない。
「還暦祝いにご主人に買ってもらえば?」
と勧められ暫く迷った。だが今年は還暦と結婚35周年のダブルの記念の年でもある。夫も許してくれるかもしれないという気になって来た。夫に買ってもらったにしても、後のやり繰りは私の担当だ。何としてでもこのチャンスに手に入れたい。
「そうやねぇ、買ってもらおうかな。」
そうして私は、その指輪を手に入れた。夫は苦笑いしながら許してくれた。
私は今まで高価な宝石やブランド物より日本の職人技が光る革製品や陶器などに興味があった。私の元に舞い込んだのはまさに職人技が光る指輪である。見るだけで口元が弛む。デザインから普段使いも出来そうだ。ジーンズと合わせてみる。ターコイズの青がマッチする。
『さりげなく付けてるのがいいのよね。』
と思いながら出掛ける。だが歩いていても、切符を持っても、電車の中でも、常に私の身体中の全神経は指輪に集中してる。さりげなくとは程遠い。
『まだまだだなぁ。私…。』
それでも、指に光る指輪を見る度にワクワクする。テンションも上がるというものだ。
少し背伸びして買った指輪。それが似合う女になりたい。カッコよくて、生き方もスマートな女だ。そうなるための努力を惜しまない生活をしようと思う。
指輪一つで生き方まで変わるなら、案外安い買い物だったかもしれない。

入選

赤と青(灯氏 様・新潟県・29歳・男性・会社員)

妻は鉱物収集が趣味である。交際していた時も、鉱物の展示即売会によく連れていかれ、色々な鉱物の話を聞かされた。正直、カタカナが多くてあまり覚えられなかったが、2人の誕生石の話は印象に残っている。

妻の誕生石はルビー、僕の誕生石はサファイア。ルビーとサファイアは、赤と青で全然色が違うのに、元は同じ鉱物らしい。また、宝石言葉を調べたら、ルビーは「情熱・勇気・自由」、サファイアは「誠実・慈愛・賢明」。常にアクティブで自由奔放な妻と、真面目で慎重派と周りから言われる僕に、それぞれぴったりな宝石だと思った。

交際記念日に、小さなルビーとサファイアを1つずつ埋め込んだシンプルな指輪を作った。妻の指輪は外側にルビー、内側にサファイア。僕はその逆。誰にも見えない内側に、相手の誕生石がある。この指輪を2人共とても気に入り、それがそのまま結婚指輪になった。

妻とは性格・味覚・服のセンスなどは正反対だったけど、根底の価値観が似ていたのも、ルビーとサファイアのようだな、と今となっては思う。

左手の指輪をふと眺めるたびに、色々な事に想いを馳せる事ができる。こんなに小さな赤と青の石が、僕に大きな幸せを与えてくれている。なんとも素敵な事だと思う。

入選

出会い(グランマルシェの旅人 様・愛知県・27歳・女性・会社員)

宝石を買おうと思った。
アラサー、安月給、彼氏なし。同年代の友人が仕事も順調、結婚に子供にと充実してるのに、私は日々の生活で精一杯。宝石はおろか、贅沢など論外。生活にも心にも余裕がないのに。ふと目に入ったダイヤのネックレスがどうしても欲しくなってしまった。
はじめての宝石は結婚指輪がいいと思っていた。大好きな恋人に夜景が綺麗な場所でプロポーズと共に貰えたらどんなに幸せだろうかと考えていた。現実はいい雰囲気だった人には振られて結婚など夢のまた夢だ。宝石が光を反射して眩しいぐらいなのに、私ときたらなんてつまらない、先の見えないことばかりしているのだろう。思わず俯いた。
「よろしければご試着なさいますか?」
ぼんやりとネックレスを眺めていたところ、声をかけられて現実に戻る。笑顔がキラキラと輝いた店員さんが立っていた。
場違いなように感じて逃げ出したくなったが、試着ぐらいしてみてもいいだろう。私は消え入りそうな声でよろしくお願いします、と言った。
失礼致します、と彼女は鏡の前に私を連れていき、ネックレスをかけた。鏡には荒れた肌、ボサボサの髪、充血した目。いつもの冴えない私が映っていた。しかし、少しだけ違う。背筋が伸びていた。ダイヤの眩い輝きが私の卑屈に曲がった猫背を伸ばして胸元できらきらと輝いていた。
そうか。私は自ら私自身を卑屈にしていたのだな。淀んで濁っていたのは私の心だったのだな。
「これ、ください」
ダイヤを買ったから給料が上がるわけでも、恋人ができる訳でもない。むしろしばらく生活が苦しくなるだろう。ただ、少しだけ背筋が伸びれば見えるものがあるのかもしれない。背中を丸めて卑屈に歩くのはもうやめよう。
幸せの絶頂で恋人に貰う宝石ではないけれど、冴えない毎日を少しだけでも輝かせる宝石もなかなか素敵じゃなんじゃないか。そう思った鏡の中の私の瞳は少しだけ輝いていた気がした。

入選

「形見」事件(ちぎらレイコ 様・東京都・55歳・女性・会社員)

「話があるから茶の間に来て」

仕事から帰った早々の私を、母が呼びとめた。また説教?
だが待っていたのは、母が末期に近いガンという告白であった。入院の予定を淡々と説明する母の隣で、いつも妻子を怒鳴ってばかりの父が黙り込んでいた。私の動揺はさほど大きくなかった。母の家系は短命で、私は子供の頃から「お母さんもいつ死ぬかわからないよ」だの「親に頼るな」と耳にタコができるほど聞かされてきた。母はこの時50才。あの言葉がいよいよ現実になるのか、これからは父と弟の家事をやらねばならない、大変だなと思った。
「それでね」と母が座り直した。
「これ、今のうちにあんたにあげとくね」

そう言って、濃紺のビロードを貼った長方形の箱を座卓の上に置いた。中には、見覚えのある真珠のネックレスがおさまっていた。親類の結婚式など、とっておきの行事の時だけ母はこれを付ける。
「大切にするのよ」

母は少し淋しそうにほほ笑んだ。私に対しては説教するか怒っているかなので、母のこんな表情は記憶になかった。父はすっと立ち上がると茶の間から出ていった。私も自分の部屋へ行き、ネックレスをしげしげと見た。大きめの玉はわずかに金色を帯び、こちらの顔が映りそうなほどツヤは素晴らしかった。母が結婚する時、母の姉たちから贈られたこのネックレスは、母の後半生の生き証人といえる。

ねえ、お母さんの人生ってどうだった?
「もっと大事にしてあげればよかった」 
私は真珠たちにつぶやいた――。

それから30年。ネックレスは私も特別の日用にして、大事に使っている。そして・・・母は今も生きている。長命家系の父が先に逝き、その命を分けてもらったのか、しばしば旅行に行くほど元気だ。時々しか会わないのに、私の顔を見れば相変わらず説教が始まる。

そんな母娘の姿をコロコロ笑うかのように、真珠たちは今日もビロードの箱の中で輝いている。